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主な循環器疾患について Type

循環器疾患 - 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)-

心臓は酸素と栄養で満たされた血液を24時間休むことなく全身に送り続けています。しかし、その一方で心臓自体も他の臓器と同様に血液がなければ働く事が出来ないため、心臓の筋肉(心筋)を栄養する冠(状)動脈という血管があります。この冠状動脈の狭窄や閉塞によって引き起こされる病気を「虚血性心疾患」と言います。
この疾患の中で、冠状動脈が狭くなり胸が一時的に痛くなる病気を狭心症(図1)、完全につまって壊死してしまう病気を心筋梗塞(図2)と言います。心筋梗塞の急性期には死亡率が30-40%と非常に高く、緊急的な治療が必要です。当院では急性心筋梗塞の患者さんに対して、24時間対応で心臓カテーテル治療を行っています。

不整脈

心臓は正常な状態では全身に血液を送り出すポンプとして、規則正しく動いています。これは心臓の中で作り出される命令(電気活動)が心臓全体に伝わることで成り立っています。この命令が何らかの原因で乱れた場合(脈が遅すぎる、脈が速すぎる、脈が飛ぶまたは乱れるなど)を、不整脈と言います。不整脈があるからといって、必ずしも治療が必要とは限りませんが、当科ではあらゆる不整脈に対する各種検査・診断・治療を行っています。

心筋症

心臓の筋肉そのものに問題がある病気のことを心筋症と呼びます。心筋症の中には、拡張型心筋症や肥大型心筋症、虚血性心筋症や心サルコイドーシス、心アミロイドーシス、心Fabry病などがあります。遺伝性のものや他の疾患に伴うもの、原因不明のものなどさまざまな心筋症があります。心筋の変性に伴い心機能は低下し、心不全症状や不整脈などが出現します。
当院では、まず病歴を参考として心電図や心エコー図検査、採血などの一般的な検査で心筋症の診断を行います。さらに詳しい検査が必要な場合は、心臓MRIやカテーテル検査の他、心筋を直接顕微鏡で観察する心内膜下心筋生検なども行います。正確な診断のもと、薬物治療やカテーテル治療、デバイス留置術などそれぞれの疾患に適した治療を行います。

弁膜症

心臓は拡張と収縮を繰り返すことによって、全身に血液を循環させるポンプの役割を果たしています。心臓には右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋があります。血液を一方向に効率よく循環させるため、左右の心室の入り口と出口には逆流を防止するための“弁”が存在し、それぞれ僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁と呼ばれます。これらの弁に加齢や病気が原因で機能不全を起こした状態の総称が「心臓弁膜症」です。心臓弁膜症には大きく2つのタイプがあります。弁の開きが悪くなって血液の循環が妨げられる状態が「狭窄症」、弁の閉じが不完全となって血液が逆流してしまう状態が「逆流症(閉鎖不全症)」です。心臓弁膜症は自覚症状がないまま進行することもあり、放っておくと心不全につながり、生命を縮める可能性があります。

大動脈疾患

主な大動脈疾患としては、急性大動脈解離、胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤、大動脈炎症候群、大動脈弁輪拡張症があります。急性大動脈解離は、突然に発症する激しい胸痛、背部痛が主な症状です。その他、失神や脳血管障害症状(麻痺など)の症状で始まることもあります。大動脈の血管の壁の中膜が裂けることにより本来の大動脈腔(真腔)とは別に偽腔が生じます。90%以上の患者さんは高血圧を合併しています。偽腔の生じた部位、偽腔の状態(血流があるかないか)、各臓器に分岐している血管に障害を及ぼしているかどうか、で重症度はかなり異なってきますし、治療の選択(薬物療法か手術か)も異なってきます。いずれにしても生命にかかわる危険な病気であることは変わりありません。死亡率はそれぞれの病態で異なりますが、総じて10%を超えます。

胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤の病態は、いずれも動脈硬化が主因で、高血圧の合併により血管径が拡大し、進行してくれば、瘤を形成します。この瘤の径が胸部で5cm、腹部で4~5cmを超えてくる状況は自然経過で瘤の破裂の危険が年間5%以上となります。治療としては薬物療法に加え、手術やステントグラフト内挿術があります。

静脈血栓塞栓症

静脈血栓塞栓症は、深部静脈血栓症とその重篤な合併症である肺血栓塞栓症の総称です。下肢の静脈に血栓(血の塊)ができる深部静脈血栓症は、多くの場合、下肢の腫脹や疼痛で発症しますが、中には、下肢にできた血栓が遊離し、肺の動脈に詰まることで発症する肺血栓塞栓症を起こすことがあります。症状は胸痛、呼吸困難、動悸、失神などですが、重症例では生命の危機に関わることもあります。
治療は薬物治療が中心となりますが、当院では必要に応じて、血栓溶解療法(血栓を溶かす治療)、カテーテル治療も行っております。また、治療後は当院外来での定期フォローを行いますので、安心して治療を継続することができます。

閉塞性動脈硬化症

動脈硬化とは血管の壁にコレステロールなどの脂質が沈着し、血管の内腔が徐々に狭くなり(狭窄)、詰まってしまう(閉塞)病態です。動脈硬化は全身の動脈に生じますが、腹部大動脈を含めた四肢への動脈(特に下肢動脈)に起こり、閉塞性動脈硬化症と称しています。
近年、日本でも食生活、生活様式の欧米化、糖尿病・透析患者の増加、平均寿命の延長による高齢化などにより、閉塞性動脈硬化症に罹患する患者さんが増加してきています。
※症状
閉塞性動脈硬化症の症状は、血管が動脈硬化により、狭くなり、詰まってしまうことで血流が悪化することで様々な症状が起こります。閉塞性動脈硬化症の病期は以下のようにⅠ〜Ⅳ期に分けられており、病期によって症状が異なります。

  • Ⅰ期:しびれ、冷感
  • Ⅱ期:間欠性跛行(はこう):一定距離を歩くと、足(太ももやふくらはぎ)が痛み、休むとまた歩けるようになる症状
  • Ⅲ期:安静時疼痛:安静にしていても足に痛みが生じる
  • Ⅳ期:潰瘍、壊疽:血液が足の先に行かないため、足に潰瘍ができ、進行すると足が腐ってしまう

糖尿病などの基礎疾患がある場合は、症状がなくとも動脈の狭窄が進行するため、注意が必要です。
また、Ⅳ期(潰瘍、壊疽)の状態で細菌感染を併発すると、血流が悪いため、足の壊死が進行してしまい、下肢切断が必要となり、全身に波及すると敗血症(菌血症)となってしまい、致命的になることがあります。

心不全

心不全とは、心臓の機能が弱まり、十分なポンプとしての役割を果たせなくなる状態のことをいいます。わが国では、寿命がのびて高齢者が増えるにつれて、心臓病の患者さんも増えています。あらゆる心臓病は心不全の原因となり得ます。一旦、心不全を発症すると悪化を繰り返し、生命の危機に陥ることもあり、心不全の悪化を予防することが重要です。
当院では、患者さんやそのご家族に心不全についてよく理解して治療に向き合って頂くために、宮崎オリジナルの『心不全手帳』を作成致しました。心不全の患者さんには、この『心不全手帳』を用いて頂き、心不全と上手に付き合いながら、健やかな毎日を送って頂けましたら、幸いです。

成人の先天性心疾患

生まれつきの心臓の構造異常による心疾患であり、乳幼児期・小児期に診断され成人になって治療が行われる場合や、診断されずに成人になってから不整脈や心不全症状などを契機に発見される場合、手術後長年経ってから症状が生じてくる場合など様々です。当院では、成人の先天性心疾患の診断や治療を行っています。成人にみられる先天性心疾患には、心房中隔欠損症・心室中隔欠損症や房室中隔欠損症などの心房・心室の壁に穴があいている疾患の他、部分肺静脈灌流異常症(4本の肺静脈は左房へ還流しますが、一部が生まれつき右房など他の部分へ還流する)などの血管異常、先天性大動脈二尖弁などの弁膜疾患が含まれます。子供の頃に学校検診などで指摘されて経過観察とされていた場合でも、年を重ねるにつれて心臓への負担となり、心不全症状が出現してくることがあり、薬物治療や手術などの治療が必要となることもあります。

心筋炎

心筋炎とは心臓の筋肉に炎症が発症した状態であり、臨床像は非常に多彩です。軽症で治療を要さない例から、心臓の本来持つポンプ機能が障害され、致死的不整脈を発症し、時に死に至る重症例まで様々です。
原因は感染症(ウィルス性、細菌性、寄生虫)、薬物、毒素、膠原病などの全身疾患など様々で、特に多いとされるのがウィルス感染症です。現在20種類以上のウィルスが関与していることが分かっており、代表的のものとしてはパルボウィルスB19、HHV-6、コクサッキーB群などがあります。また、炎症は虚血性心疾患による心筋ダメージや物理的外傷に惹起されることもあります。
心筋炎は経過や重症度に応じて慢性・急性・劇症型に分類され、急性心筋炎の中でも急性循環不全(ショック)を伴い、致死的なものを劇症型といいます。
初期には感冒症状や胃腸症状などを呈し、身体所見としては発熱や血圧低下、頻脈・徐脈、不整脈による動悸を認めることがあります。しかし多くは特異的な所見に乏しため、専門医による診察、検査による早期診断が重要となります。
診断は、血液検査、心電図、胸部レントゲン写真、心エコー図検査、心臓カテーテル検査、心筋生検により行います。一部の重症例を除けば、多くの心筋炎が抗炎症剤や抗菌薬などの原因治療と心不全に対する利尿剤や昇圧剤を用いる治療にて軽快します。しかしながら心筋への炎症波及が急激な場合(劇症型)には、急激に心臓ポンプ機能が低下し、発症から数時間(数日)で全身状態が悪化し人工呼吸器、補助循環(大動脈バルーンパンピング、経皮的心肺補助装置)を必要とします。また、人工心臓植え込みや心臓移植を行わなければならない場合もあります。
当院では上記の検査にて診断を行い、重篤な場合には人工呼吸器、補助循環装置などを用いた集中管理を行います。

感染性心内膜炎

感染性心内膜炎は、血液中に入り込んだ細菌が心臓の弁などに付着することから引き起こされる心臓の疾患です。健康な心臓に細菌などが感染することはまれですが、弁膜症や一部の先天性心疾患、人工弁置換術後など特殊な状況では、血液に入ってきた細菌が付着して「巣」を作ることがあります。こうした心臓の弁に付着した細菌の「巣」によって、長い時間にわたり炎症が続き、弁を壊していきます。診断には血液中の微生物の証明と心エコー検査が必要となります。感染性心内膜炎の治療には、適切な抗生剤の長期投与が必要です。実際には菌の塊内は血流に乏しく、抗生剤も効きにくいため、通常より投与量を増やして期間を長くする必要があります。また、弁破壊による心不全の出現、菌の塊や破壊された組織が剥がれて塞栓の危険性が高いと判断された場合は、壊れた弁そのものを切除して人工弁に取りかえる外科的治療が必要になります。

心臓腫瘍

心臓腫瘍は原発性(良性または悪性)の場合と転移性(悪性)の2種類があります。約70%が良性腫瘍、30%が悪性腫瘍といった割合です。
良性腫瘍では粘液腫が最も多く、その他に脂肪腫、乳頭状弾性線維腫、横紋筋腫、線維腫、血管腫、房室結節中皮腫、奇形腫などがあります。
悪性腫瘍には原発性のものと転移性のものとがありますが、原発性の悪性腫瘍は、悪性中皮腫、肉腫、悪性リンパ腫などです。
転移性心臓腫瘍とは、心臓以外の他臓器原発悪性腫瘍の心臓への転移のことです。黒色腫、肺がん、乳がん、腎がん、悪性リンパ腫、白血病などが心臓転移を起こす頻度の高い腫瘍として挙げられます。
症状の主なものは、腫瘍占拠に伴う血流障害と塞栓症(そくせんしょう)です。心臓腫瘍として最も頻度の高い粘液腫の場合は左心房に発生することが多いため、僧帽弁という、左心房と左心室の間の扉を塞ぐことによる症状(失神、めまい、息切れなど)が出現します。この症状は体位によって症状変化が認められることがあり、稀に腫瘍が僧帽弁口にはまり込んだまま動かなくなり、血流が遮断され突然死をきたすことがあります。血流障害に伴う症状以外では、粘液腫の30~50%に腫瘍の一部が壊れて血流に乗って飛んで行き、塞栓症を起こすことがあります。塞栓症の可能性は粘液腫以外の腫瘍でも起こりえます。
心エコー図検査、心臓CT、心臓MRIで腫瘍の存在について診断ができます。しかし、腫瘍の正確な組織診断に関しては、鑑別が難しく、切除して初めて診断に至る場合もあります。
通常、良性原発性腫瘍の治療は外科的切除であり、その後は5~6年間にわたる継続的な心エコー検査により再発のモニタリングを行います。転移性心臓腫瘍の治療は、腫瘍の原発巣により治療法を決定します。

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