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経皮的僧帽弁クリップ術(MitraClip) MitraClip

マイトラクリップによる経皮的僧帽弁クリップ術について

経皮的僧帽弁クリップ術とは
― 2018年4月に保険適応になった、僧帽弁逆流症に対するカテーテルを用いた新しい低侵襲治療です。

僧帽弁逆流が高度で、自覚症状がある場合には、通常外科手術である僧帽弁形成(または置換)術が行われます。しかし、過去に心臓手術を受けたことがある方、全身状態が良くない方、75歳を超える高齢者など、手術リスクが高い場合には、外科治療を断念せざるを得ないことが少なくありませんでした。このような心臓外科手術が困難な患者さんに対して、マイトラクリップを用いた経皮的僧帽弁クリップ術が行われます。
経皮的僧帽弁クリップ術は、外科手術に比べて体への負担が少ないことが特徴で、従来の心臓手術のように、胸骨切開、心臓停止といった特殊な操作を行う必要がありません。かわりに足の付け根の静脈に挿入したカテーテルから、長さ約15mmのクリップを心臓に到達させて、僧帽弁をクリップで掴み、逆流を軽減させる治療法です。

僧帽弁逆流症 (MR) とは

― 心臓の中にある弁の一つである僧帽弁の動きが悪くなり、うまく閉鎖しなくなることで、血液が心臓の中で逆流してしまう病気です。

心臓は血液を全身に送るポンプの働きをしていますが、内部は4つの部屋(左右の心房・心室)に分かれています。各部屋の出口に合計4つの弁がありますが、そのうちの一つの弁が僧帽弁です。僧帽弁は肺で酸素を受け取った血液が戻ってくる左心房と、全身に血液を送り出す左心室の間にあります。

何らかの原因で僧帽弁の動きが悪くなり、うまく閉じなるなることで、血液が左心室から左心房に逆流してしまう病気が僧帽弁逆流症 (MR) です。
75歳以上の高齢者のおよそ10人に1人が、中等度から高度の僧帽弁逆流症に罹患していると言われています。

①僧帽弁逆流症 (MR) の種類

僧帽弁逆流症 (MR) は大きく分けて器質性(一次性)MRと機能性 (二次性) MRの2種類があります。

  • 器質性(一次性)MR
    僧帽弁の「弁尖(前尖、後尖)」は、「腱索」と呼ばれるひもで左心室の筋肉の一部である「乳頭筋」につながっています。これらの構造物のうちいずれかに、異常が生じること(腱索の断裂や、弁尖の変性など)で弁尖の接合面がずれることで、逆流を起こします。
  • 機能性 (二次性) MR
    心筋梗塞や心筋症など、何らかの原因で心臓が拡大し、僧帽弁の弁輪が大きくなったり、弁尖が引っ張られたりすることで弁尖の接合不全が生じ、逆流を起こします。

②僧帽弁逆流症 (MR) の症状

初期は無症状のことがほとんどですが、進行するにつれて、労作時呼吸困難、息切れ、動悸、倦怠感、むくみなどの症状が現れます。さらに進行すると心不全を引き起こし、命に関わる危険性があります。

③僧帽弁逆流症 (MR) の診断

診断は心臓超音波検査(心エコー図検査)によって行われます。主に、体表面から行う経胸壁心エコー図検査で、僧帽弁の性状や逆流の重症度、心機能の評価を行います。この検査は患者さんの負担も少なく、繰り返し行うことができるため、診断や病気の進行を知ることができます。
マイトラクリップによる治療前には、より詳細に僧帽弁の状態を評価するため、超音波の探触子を食道内に入れて、心臓の裏側から観察を行う経食道心エコー図検査も行います。

経皮的僧帽弁クリップ術の適応

―重症の僧帽弁逆流症 (MR) で、何らかの理由で外科的手術が困難な患者さんが適応となります。

適応条件は以下のすべてを満たす患者さんになります。

  • 左室駆出率(※1)20%以上
  • 症候性(MRによる何らかの症状を有する)
  • 高度の僧帽弁逆流
  • 外科的開心術が困難(※2)

※1 心臓機能評価の指標の一つで、正常値は55%以上。
※2 75歳以上の高齢で心機能が低下している方、過去に開胸手術(冠動脈バイパス術など)を行っている方、肝硬変や肺気腫などの肝疾患、呼吸器疾患などを合併している方、胸部に放射線治療歴のある方など。

経皮的僧帽弁クリップ術による治療の流れ

―大腿静脈より挿入したカテーテルからクリップを持ち込み、僧帽弁の前尖・後尖を逆流のある部位で把持してクリップを留置します。

治療は全身麻酔下に、経食道心エコー図検査のもと進められます。足の付根の静脈 (大腿静脈) からカテーテルを右心房まで挿入したのち、専用の針で右心房と左心房の壁 (心房中隔) を穿刺し、カテーテルを左心房まで進めます。カテーテルを通じて、クリップを僧帽弁の逆流部位まで持ち込み、同部をクリップで掴みます。逆流が減っていることを確認して、クリップを留置しますが、逆流の減少が不十分な場合には、追加のクリップを留置することも可能です。
治療時間は2〜4時間ほどで、合併症がなければ約1週間程度で退院が可能です。

経皮的僧帽弁クリップ術施術時

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