検査について Inspection
心電図 - Electrocardiography -
ホルター心電図
ホルター心電図は小型軽量の装置を24時間身につけて、日常生活中の長時間の心電図を記録して、これを解析して観察する検査です。不整脈は出たり出なかったりするため、受診時の心電図検査では十分な情報が得られなかった場合に行われます。そして、実生活の中で長時間の心電図を記録し続ける事で、記録した波形をみて症状との関連を調べることができます。装着時は一般的に入浴ができません。
運動負荷心電図
運動負荷心電図は、運動により心臓に負担をかけた際に、心電図にどのような変化が起こるかを調べるために行われます。運動負荷により、心臓は通常より激しく、そして速く動くため、安静時では認められないような異常を明らかにすることができます。歩行やトレッドミル、エルゴメーター(自転車)によって運動負荷をかけます。負荷中は、心電図はもちろん、血圧や呼吸などもモニターされます。虚血性心疾患や不整脈が疑われる場合に、運動負荷試験が勧められます。
循環器で行う超音波検査(エコー検査)
心エコー図検査は、心臓の構造や動きの他、血流や心臓内の圧力など多くの情報を得ることができ、心臓病の診断に欠かせない重要な検査です.超音波を利用した画像診断法であるため放射線被曝はなく、痛みや体への負担が少ない検査です.当院は、最新の高機能装置を複数台備えており、年間約15,000件を越える心血管超音波検査を施行しています。
心エコー図検査には以下のような種類があります。
- 経胸壁心エコー図検査:胸の表面に探触子(プローブ)と呼ばれる超音波の端子を当てて心臓を観察する検査であり、ほとんどの心臓疾患に対して行われる、最も基本となる検査です。
- 経食道心エコー図検査:胃カメラのような長い管状の超音波プローブを喉から食道内に入れ、食道側から心臓をより詳しく観察する検査.苦痛を和らげるために基本的には静脈注射で軽く麻酔をかけて検査をします。食道や胃の疾患があるなど、場合によって検査ができないことがあります。
- 負荷心エコー図検査:検査用のペダルを漕いだり(運動負荷)、点滴薬剤を使ったり(薬物負荷)して心臓に負荷を加えて評価する検査です。安静時にはわからない心臓の状態を診断する事ができます。
ABI (ankle pressure index)
SPP (皮膚組織潅流圧)
血管超音波検査
末梢動脈疾患の診断や治療効果の判定として、血管形態や血流量をリアルタイムで測定することができる有用な検査方法です。狭窄や閉塞部位を診断することができます。
大動脈CT、冠動脈CT、肺動脈CT
CTとはコンピュータ断層診断装置(Computed Tomography:CT)を使用した検査の事で、X線を使って身体の断面を撮影する検査です。
当院では現在320列マルチスライスCT機2台が稼働しています(東芝メディカルシステムズ社:Aquilion ONE Vision Edition, キャノンメディカルシステムズ社: Aquilion ONE/PRISM Edition)。従来型のCT機と比較しより短時間で、高精細な画像を撮像することが可能です。心臓のような動く臓器の場合でも超高速に撮影しているため、ゆがみやひずみが生じません。被ばく量も64列式と比較し約20%低減することができます。
大動脈CT
大動脈解離や大動脈瘤等の診断や、手術適応の評価などに有用な検査となります。さらに近年では、CTの時間分解能、空間分解能の向上により大動脈弁狭窄症に対するTAVI(径カテーテル的大動脈弁挿入術)のための術前評価にも重要な検査となっています。
※大動脈解離画像
急性大動脈解離:下行大動脈に解離所見を認めます。
※TAVIの画像
大動脈弁狭窄症:TAVI術前に必要な大動脈弁の形態の評価を行っています。
心臓CT
※心臓CTの画像
狭心症疑い:冠動脈CTを撮像し、3D再構成化したものです。
肺動脈CT
急性肺血栓塞栓症:右肺門部に血栓塞栓像を認めます。
心臓核医学検査(心筋シンチ:RI検査)
RIとは放射性医薬品(ラジオアイソトープ)の意味で、それらを体内に投与すると目的の臓器に集積します。それを検査用カメラで体外から撮影し、分布や集積の程度を見るのがRI検査です。
循環器領域では狭心症などの虚血性心疾患に対する心筋シンチグラフィーが代表的な検査で、負荷(運動負荷または薬物負荷)を行うことで心臓の筋肉への血流が正常なのか、虚血(血流が乏しい)なのか、梗塞(壊死)なのか、を判別する事ができます。血管を見るのではなく、心筋に対する血流量の評価(機能的評価)が行えるため、治療が必要かどうかの判定が出来ます。また、造影剤を使用しない為、腎機能が低下している方や造影剤アレルギーのある方へは特に有用な検査になります。
その他最近ではATTR心アミロイドーシスの病型診断に用いられる事もあります。
肺に対しては、血流スキャンという核医学検査を行う事により肺への血流の分布異常を描出する事が出来るため、肺血栓塞栓症の診断が行えます。
外来で行うことができ非観血的検査となるため、カテーテル検査と比較して安全性は高いです。
心臓MRI(磁気共鳴画像)
MRI検査は強力な磁石でできた筒の中に入り、磁気の力を利用して体の臓器や血管を撮影する検査です。心臓MRIはそうした電磁気の力を利用して、心臓に異常がないかを診断する検査方法です。MRIは体を傷つけることも、痛みを伴うこともありません。加えて、放射線による被曝を心配することもないため、繰り返し検査を行う事が可能です。また、身体の輪切り(横断像)だけでなく、あらゆる角度の断面像を得ることができ、心臓の機能や形態、冠動脈、心筋組織性状、心臓や血管などを総合的に評価できる有用な検査です。
当院では高画質のMRI装置(PHILIPS Ingenia Elition 3.0T)で検査を行なっています。検査中の患者の不安や苦痛など様々なストレスが軽減されるように努力していきます。
【注意】心臓ペースメーカー、金属製心臓人工弁や刺激電極などを身につけている方はMRI検査ができないことがあります。検査希望時はご相談ください。
心臓MRI画像
T2強調画像
心筋遅延造影MRI検査
冠動脈MRA
冠動脈MRAは放射線被ばくや造影剤を使用することなく、心臓の血管(冠動脈)を明瞭に描出することができる検査方法です。冠動脈MRAは、高度石灰化症例でも動脈内腔の描出が可能であり、血管の走行異常の確認や血管が動脈硬化によって細くなっている状態を立体(3D)画像を作成して診断を行います。放射線や造影剤を用いることなく診断が可能なため、患者様のお身体のご負担が少なく、なおかつ心臓の病気の早期診断、早期治療に役立てられます。
※下肢MRI画像→
心臓カテーテル検査
臓およびその近くにカテーテルという医療用の細く柔らかい管を進めて行う検査の総称です。心臓内の各部屋の圧力や心拍出量(心臓のポンプとしての力)を測定したり、弁膜症の程度を判定したり、冠状動脈(心臓を栄養する血管)の動脈硬化の状態を観察したりすることができます。特に狭心症の方には、動脈硬化性病変の有無やその程度を評価し、治療方針を決定する大切な検査になります。
通常は前日の午後に入院し、検査翌日午前中に退院していただきますので、2泊3日の入院となります。また、患者さんの年齢や状態・検査の内容によっては、検査当日午前中の早い時間に来院していただき、当日の夕方に帰宅する日帰りカテーテル検査も行っています。検査当日は、検査着に着替えていただきカテーテル検査室で検査を行います。検査時間は20分前後で、検査後の圧迫止血に約3~4時間を予定しております。右手首のあたりに局所麻酔を行い、そこから太さ1.7mmのやわらかい管(カテーテル)を血管の中に通して心臓の冠状動脈や心臓内まで誘導していきます。そして、造影剤を冠状動脈や心臓の中に流し込んで撮影(動画)を行います。可能であれば、検査後、手首の圧迫止血を行っている間にご家族と一緒に動画を見ていただきながら結果を説明します。当院では年間3,000例、1日平均10例の方に心臓カテーテル検査を行っております。
電気生理学的検査
EPS(Electrophysiology Study;電気生理学的検査)とは、電極カテーテルという数ミリ径の細い管を、足の付け根や首の静脈から、心臓に向かって数本挿入します。このカテーテルの先端には小さな電極が付いており、これを心臓の中の壁に接触させると、心臓内の電気の流れを細かく見ることができ、不整脈の種類や発生している場所の診断において非常に有効な検査です。
基本的には入院が必要な検査となり、結果によってそのまま不整脈の治療(カテーテルアブレーション)を継続して行います。
植え込み型ループレコーダー(ILR;Implantable Loop Recorder)
ILR(Implantable Loop Recorder;植え込み型ループレコーダー)は長期間(約3年間)心臓の拍動を継続的に監視し、不整脈や失神などの症状が起きた時の心電図を記録する装置です。記録された心電図から、症状が起きた時に心臓の拍動に異常がなかったかを調べることができ、失神の原因診断に利用することができます。
繰り返す失神発作に対して12誘導心電図やホルター心電図検査などいろいろな検査をしても原因がわからない場合に適応となり、装置は左胸の皮膚の下に埋め込んで使用します。手術は局所麻酔で時間としては10~15分程度で終了する比較的簡単なものです。サイズが小さいこともあり植え込んだ後は見た目がほとんど目立たず植え込み後にいつも通りの生活をすることができ、 発作を捕まえて原因がわかったときは簡単に取り出せます。また、条件はありますがMRI 検査も可能です。