治療についてTreatment

診断と治療に関するガイドライン

 当院では、循環器疾患の診断及び治療に関して、「日本循環器学会のガイドライン」に基づく診療を行っています。
一般的な臓病の治療として以下のような方法があります。

薬物療法

 心臓病の基本を成す治療法です。いろいろな疾患によって、またさまざまな病態に応じて適切な治療薬を選択いたします。実際には、急性心不全であれば、まず点滴を中心とした薬剤、慢性心不全であれば、内服薬から始められることが多いです。その他、虚血性心疾患、不整脈、高血圧症、高脂血症など様々など疾患に応じて、薬剤が異なりますし、患者さんの年齢、性別、体重、肝機能、腎機能などによって用量が変わります。

 当院では、特に血管造影室や手術室に隣接し充実した心臓病専用の集中治療室(病床12床)が完備され、時間とともに変化しやすい重症患者さんの血行動態や呼吸状態を観察しながら治療することができます。集中治療室では、毎朝、心臓血管外科医師や集中治療室看護師、臨床工学技士と一緒にカンファレンスを行い、その後、循環器内科医師全員でベットサイド回診して治療方針を決めています。

低心機能に対する人工補助療法

 当院では、大動脈内バルーンパンピング(IABP)4台、人工心肺装置2台を完備しています。直接大血管にこれら機器を挿入し、低心機能の患者さんの血行動態を補助します。通常は、一時的に使用して動態が安定すれば抜去します。

経皮的冠動脈形成術(PCI)

 冠動脈の狭窄(細くなって血液の流れが悪くなっている)部位に対して、右手首もしくは足の付け根の動脈から太さ2mmのやわらかい管(カテーテル)を挿入して治療を行います。カテーテルの中を通して、風船やステント(金属のアミ)を狭窄部位まで運んで行き、その場所で風船を拡げることにより狭窄部位を拡張し、風船により壊された血管の壁を支えるためステントを留置します。

 動脈硬化がひどく血管が固くて(血管壁が石灰化など)風船では十分ひろがらない場合は、ロータブレーター(ヤスリのようなもの)を使って血管の固くなっている部位を削ることもあります。手首から治療を行った方は、終了直後からすぐに歩く事が可能です。通常は一日経過を見させていただき、治療の翌々日に退院となります。当院では年間約800例以上に経皮的冠動脈インターベンションを行っております。この症例数は、国内でも有数です。

経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)とは

 大動脈弁狭窄症の新しい治療として、カテーテルを使った大動脈弁置換術があります。この治療は、足の付け根の動脈から折りたたんだ人工弁の内側に弁を開くための風船を装着した特殊なカテーテルを入れ、大動脈弁まで持っていき、狭くなった大動脈弁を新しい人工弁に置き換える手術で、胸を切り開いたり、心臓を止めたりすることはありません。詳しくはこちらの経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)ページをご覧ください。

心臓リハビリテーション

 急性心筋梗塞、狭心症や開心手術後などの患者さんを対象に、精神的にも、肉体的にも安心して、社会復帰ができるように行う運動療法です。再発予防としても、食事療法、薬物療法とならび大変有効な治療法です。当院では、専属の心臓リハビリテーション指導士(医師、理学療法士、看護師)が、一人ひとりの患者さんにあった運動療法(質や量)を考え、退院までの間、治療に当たっております。この他、入院中に管理栄養士による食事指導や、薬剤師による服薬指導が行われます。

心臓リハビリテーション

カテーテルアブレーション

 心臓は全身に血液を送り出すポンプであり、全身の血管と心臓はつながっています。カテーテルという直径2mm程度の細い管を、足の付け根の大腿静脈(又は動脈)から血管内に挿入し、心臓の中までもっていき、不整脈の発生部位(または回路)を探し出します。その上で高周波という特殊な電気をカテーテルに流し、カテーテル先端の心臓に当たった部位をあたため、焼灼することで、不整脈を根治(完全に治す)治療法です。

 治療はカテーテルを挿入する部位の局所麻酔だけで可能であり、比較的簡単な不整脈(発作性上室性頻拍症、心房粗動)に対する治療時間は約1~2時間ですが、複雑で難しい不整脈(心房細動、心室頻拍、術後の不整脈など)の場合には数時間を要することもあります。入院期間は通常3日間であり、退院後の日常生活に制限はありません。

 合併症として、一般的に、カテーテルにより血管や心臓を傷ついたり(心タンポナーデ、房室ブロックなど)、軽度の脳梗塞等を起こす可能性などがあります。当科での平成21年(2009年)度のカテーテルアブレーション実績は76例で、その内訳は発作性上室性頻拍症36例、WPW症候群1例、心房粗動23例、心房頻拍6例、心室性期外収縮5例、心室頻拍5例でした。

ペースメーカー

 心臓は必要な血液量を送り出すために、心臓の収縮力と収縮回数(心拍数)を調整しています。しかし、心拍数が少なくなる(徐脈)になると、全身への十分な血液量を送り出すことができなくなり、息切れや全身倦怠感が生じたり、脳に必要な血液量を送れなくなるため、頭がボーっとしたり、意識を失うことまであります。生命に危険がおよぶ徐脈に対しては、安定した効果が期待できる内服薬はほとんどないため、一定間隔で心筋に電気刺激を与えることで心臓の収縮が起こし、心拍数の調整を確実に行うことができる心臓ペースメーカーという機器を使います。治療法としては、局所麻酔にて、右あるいは左前胸部皮下に5cm前後の切開を入れ、約20g前後のペースメーカーを植え込み、血管(静脈)を経由して心臓内(右心房あるいは右心室)に1-2本のペーシングリード(電線)を挿入・留置します。

心臓再同期療法(CRT-P)・埋め込み型除細動器(ICD)

 現在、薬の治療によって症状の改善しない重症心不全に対しては心臓移植、補助人工心臓といった治療手段もありますが、一般的な治療法となっていないのが現状です。このような状況下で重症心不全症状を改善する治療として心臓再同期療法 (CRT:Cardiac Resynchronization Therapy) があります。この治療は、通常、心臓の右側(右心房と右心室)に刺激を伝えるリード(ペーシングリード)に加え、全身に血液を送り出す左心室にも刺激が伝わるようにリードを挿入し、ほぼ同時に電気刺激を与えて心臓の機能を高めることで、心不全の予防や心機能の改善、生命予後の改善を目的とし、約7割の方で心機能の改善がみられます。

 また、致死的な心室性不整脈が出現する患者さんでは、突然死をもたらす重症の不整脈を治療するため、薬物療法に加え植込み型除細動器 (ICD:Implantable Cardioverter Defibrilator)で治療することもあります。ICDは不整脈を予防するものではありませんが、自動的に不整脈を監視し、すばやく発作に反応して治療を行い不整脈発作による突然死を防ぎます。重症の心不全、低心機能の患者さん、特に前述の心臓再同期療法を必要とするような患者さんの場合、この致命的な不整脈が発生する危険性が高いといわれています。

両室ペーシング機能付埋め込み型除細動器(CRTD)

 2006年8月より本邦でも両者の機能を持ち併せた「両心室ペーシング機能付埋込型除細動器 (CRT‐D) 」の使用が可能となりました。本体は、数センチ大で(重さ約75g)電池とマイクロコンピューターが搭載されたチタンでできています。それにつながるリード線が血管(静脈)を通って心臓内にその先端が置かれ、心臓が発する電気情報を絶え間なく本体に送り、致死的不整脈の発作が起きたときには、本体からの電気刺激を心臓内に伝え治療を行います。そして正常な拍動を取り戻させる働きをします。治療適応につきましては、専門の先生にお尋ねください。

末梢血管インターベンション

 当院では、歩くと足が痛くなる「間欠性跛行」を症状とする患者さんのみならず、足への血流が不足する事によって生じる足の壊死や難治性性潰瘍を呈する「重症下肢虚血」に対しても積極的に治療に取り組んでいます。何ヶ月も傷が治らない、安静時に足が痛い、膝上や膝下での切断が必要と言われた患者さんは、かかりつけ医と相談のうえ、当院受診を検討してみてください。

経皮的血管形成術(PTA)

 閉塞性動脈硬化症の治療は、まず薬物療法ですが、症状がコントロールできない場合は、カテーテル治療やバイパス手術を考慮します。

大動脈弁狭窄症に対するバルーン治療(BAV)

 大動脈弁狭窄症は大動脈弁(左心室と大動脈の間を隔てる扉)の開きが悪くなる病気です。 大動脈弁狭窄症の症状としては、失神、胸痛、呼吸困難があります。 重症度は主には心エコー図検査・カテーテル検査・CT検査などで判断します。重症大動脈弁狭窄症に対する治療の第一選択は開胸手術による大動脈弁置換術です。ただし、開胸手術適応外と担当医が判断する場合があります。このような場合の治療として、バルーン拡張術を検討いたします。風船を大動脈弁まで運んでいき、風船を広げることで開きが悪くなった弁を開きやすくする治療です。治療適応につきましては、専門の先生にお尋ねください。

閉塞性肥大型心筋症に対する経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)

 肥大型心筋症は心臓の筋肉が肥大して、心臓のポンプ機能に影響が出てしまう病気です。 自覚症状として、息切れや胸痛、失神などが認められます。その中でも、重度閉塞性肥大型心筋症では心臓の壁の厚みが強いことで、血液が心臓から押し出される際に通る道筋に狭い部位が出来てしまい、心臓への負担が大きくなるため積極的な治療が必要となります。治療の基本は薬物治療です。ただ、閉塞性肥大型心筋症の場合は、薬物治療では改善しないことがあり、その際には外科的手術を第一選択に行っておりますが、手術適応外の場合には、カテーテルを使用した経皮的心室中隔アルコール焼灼術が行われます。

 カテーテル治療は局所麻酔下に行う、体力の消耗や傷が小さい低侵襲の治療です。病変となる部位の血管にカテーテルを通してエタノールを極少量注入して、病変部位の心筋を壊死させ収縮しなくすることで血液が押し出される際に通る心臓の道筋が広くなり、心臓への負担が軽くなり自覚症状が改善します。心筋を傷害させますので、合併症が生じることもあり、通常治療後1週間から10日間入院が必要となります。治療適応につきましては、専門の先生にお尋ねください。

閉塞性肥大型心筋症に対する経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)

慢性血栓閉塞性肺高血圧症

 器質化血栓により肺動脈が狭窄・閉塞し、肺動脈圧が上昇し、肺高血圧を呈する疾患を慢性血栓閉塞性肺高血圧症といいます。この病気は適切な治療を行わなければ、生命に関わる可能性がある病気です。治療法としては、外科的手術、薬物療法に加え、近年では狭窄・閉塞した肺動脈を風船で拡張するカテーテル治療「経皮的肺動脈拡張術(BPA)」が積極的に行われるようになり、その良好な治療効果も報告されています。

経皮的肺動脈拡張術(BPA)

 局所麻酔下に、頸部もしくは足の付け根の静脈より柔らかい管(カテーテル)を挿入して治療を行います。まず、肺動脈の造影を行い、狭窄・閉塞部位を同定します。確認後、狭窄部を血管内エコーで評価し、 至適なサイズの風船で肺動脈の狭窄部を拡張します。術後翌日までは集中治療室で術後管理をさせて頂きますが、 経過に問題なければ、翌日より一般病棟へ戻って頂きます。個人差はありますが、約1週間から10日間ほどで退院可能となります。
 当院では、平成25年よりBPAを開始しました。BPAを受けられた患者様からは自覚症状の改善の声が聞かれております。 治療適応につきましては、専門の先生にお尋ねください。

経皮的肺動脈拡張術(BPA)
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